~灸頭鍼~施術のための準備品

灸頭鍼施術のための準備品

 

身体に刺した鍼を直接温める灸頭鍼は、

大きな効果を得ることができますが、
火傷の危険が伴い、
施術には多大な注意を要します。
そのために、施術前の器具の準備は大切です。

灸頭鍼の施術の際に必要な器具を説明していきます。

1.基本の器具
2.温度の管理をするための器具
3.施術後の片づけをするための器具

 

 

1.基本の器具

以前は”温灸用の粗艾”を丸めて作っていましたが、 今は灸頭鍼用の”切り艾”があります。
私は、写真の切り艾を使用しています。

               

 

 ・鍼の鍼柄

プラスチックの鍼柄は溶けます。

鍼柄が金属でないといけません。

 ・鍼の太さ 

鍼が細いと、艾を付けた場合にしなって曲がることがあり、
燃えている艾が途中で落下しやすく危ない。
しならない太さの鍼が理想である。私は、5番の太さを使用しています。

 ・鍼の長さ

普通の鍼施術の際、刺入の深さは、刺し入れない部分で調節できるが、
灸頭鍼の際は、刺し入れない部分の長さを一定にしたいので、
刺入の深さは、鍼の長さで調節しないといけません。(下図)

・その他

・チャッカマン  艾に火をつけるとき、普通のライターやマッチでは、施術者が火傷をする恐れがあるので、
チャッカマンが適当だと思われます。

・マジック    鍼を刺す位置を正確に決めるために使います。

 

 

2.温度の管理をするための器具

灸頭鍼は、受術者が途中で熱いと訴えたからといって、
鍼を抜くことは危険です。

例えば、鍼を素手で触ると、指を火傷します。
また、下手に触ると、火のついた艾が落ちて転がり、
体表に落ちれば、受術者が飛び上がるほど熱い思いをさせますし、
床に転がれば、床が焼けます。
びっくりして、鍼を刺したままで受術者が動いたら、鍼が曲がります。
医療過誤になりかねません。大変なことになります。

だから、温度の管理をするための器具を準備していることはとても大切です。

  • 厚紙

鍼と皮膚の間に挟んで、輻射熱を遮断して温度調節をします(下図)

  • 先の濡れたピンセット

先端にガーゼを巻いたピンセットを作っておき、施術の前に水で濡らしておきます。
鍼体の温度が上がりすぎたとき、軽く挟んで温度を下げます。(下図)

  • 濡れた布

火のついた艾が万が一、体表やベットに転げ落ちたとき、
素早く火を消すことができるように用意しておきます。

 

  • ストップウォッチ

さて火を付けて数分たちました。受術者が熱いと訴えてきました。
しかし、鍼の温度はもっと上がるのでしょうか?
もっと上がるのなら、厚紙や濡れたピンセットで温度を下げないと、火傷をしてしまいます。
それとも既に最高頂点は過ぎているのでしょうか?
それならば、これ以上温度が上がることはないことを説明すれば、
不安はなくなるでしょう。

 

このように熱さの管理をするには、
点火してからの時間の経過と温度の変化を分かっておかないといけません。

 

自分で作った艾玉は、艾の質と丸めた硬さで、燃焼最高温度や点火からの時間が変わるでしょう。
私の場合、セネファの切り艾”比叡”を使用しているので、
点火から燃焼最高点の時間はある程度の目安はつきます。
(湿度や点火の仕方で差はあります)

 

ー私の基本時間は、ー

点火後30秒 温かく感じる

2分     かなり熱くなる(煙がモクモク出ます)

2分~3分    熱さの最高点に達する

(煙は出なくなります)

3分30秒   きつい熱さはなくなる

4分      熱さが身体にしみて気持ち良い

(艾の火が消えます)

※火が消えたかどうかは、目視や艾の周囲に手を持っていき、手で火が消えたかどうかの確認をしましょう。

5分      熱さは感じなくなるが、鍼はまだ熱いので触れない(抜けない)

6分~7分     鍼に触れても大丈夫

 

これは目安です。火のつけ方や室温、湿度によっても変わります。
しかし、ストップウォッチで時間を測りながら施術をしないと、
どう対処していいかわからず、失敗します。
必ずストップウォッチは準備しましょう。

 

私の熱さの対処の目安は、
2分で我慢できない熱さになったら、
まず、厚紙で輻射熱を遮って対応します。

それでも熱かったら、濡れたピンセットで、鍼の温度を直接下げます。

 

 

<参考>深部火傷

私は自分自身の身体にいろいろなやり方の灸頭鍼を施術したとき、いろいろな火傷もしました。
それは、また報告します。

 

 

<参考>灸頭鍼の施術で気を付けること

・鍼はまっすぐに刺す

鍼が斜めだと、艾が落ちやすくなります。

基本はまっすぐに刺しましょう。

・同時に複数の灸頭鍼はやらない

受術者が動いたら、火が付いた艾が皮膚に落ちます。

鍼を簡単に触って抜くこともできません。

同時に灸頭鍼施術をする箇所は、せいぜい2か所だと思います。

・2個同時に火をつけるときは、鍼を刺す部位を5cm以上離す。

2個の灸頭鍼の幅が狭いと、輻射熱が重り熱くなる部分ができます。
途中で鍼を離すことはできませんから、
最初から離して刺しましょう。

・同じ場所に2回目の施術をすると、1回目より熱くなる。

1回で物足りなかったからと、同じ場所に2回目をすると、
思ったより熱くなります。
考慮して施術しましょう。

 

 

3.施術後の片づけをするための器具

やっと、緊張の時間が終わりました。

スムーズにいけば、受術者は施術部が内部から温まり、
とても気持ち良い感覚を味わっていることでしょう。

 

しかし、灸頭鍼は、燃えカスの処理をして終了です。

・手製鍼柄残灰キャッチャー

まだ灰が鍼柄に付いていれば、これを使って灰を取ると、
後の処理が簡単にできます。
下図のように真ん中のV字に鍼を挟んで持ちあげて、灰を取ります。(下図)

皮膚上に落ちた灰は、手製の塵取りと刷毛で履き取ります。(下図)

それでも皮膚上に灰が残っているならば、ティッシュかガーゼ(乾いたもの)で軽くふき取りましょう。

 

 

 

これで、灸頭鍼施術の際に用意しなくてはいけない器具の説明を終わります。

では、火傷に気を付けて、効果ある灸頭鍼をしてください。(^^)/

 

東京都在住 鍼灸師

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